622: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/23(日) 16:20:13.36 ID:+2DD1k7i0
まだ客入りは三割といったところで空いている。
これから、ファミレスは混雑する時間帯に入る。

立ちっぱなしの仕事には慣れた。
やっていけるかどうか、
不安になったのは最初の三日くらいだ。
人間の身体というのもよく出来ている。

高岡早紀に似た女子大生のウエイトレスが真田と立ち話をしてる。
バイト先で一番華やかな雰囲気の女だ。
本物の高岡早紀が持つ、かそけき淫靡な空気には及ばないが、
十二分に美人と言える部類だろう。

大学生と比べると、秋山や後藤がやはり高校生なんだと思う。
二十歳の大人は、やはり違う。
違うと分かるだけで、どっちが良い悪いではない。

俺としてはどっちでもOKちゃん!

623: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/23(日) 16:22:21.86 ID:+2DD1k7i0
高岡「真田ー、この前、客に尻触られたんだけど」

なんだと!
出川もー、出川も触りゅー。

真田「大変でしたね」

真田は積み上がったトレイを拭きながら、高岡に答えている。
学校のようにそっけない感じはなく、笑みさえ浮かべている。
なにその笑顔!

高岡「は? そんだけ?」

真田「俺に何をしろと?」

真田の苦笑いなんかも、バイトだと見るようになった。

真田のスタンスには明確な線引きを感じる。

乱暴に区別すれば、
学校は金を払って授業を受けに行ってるところ。

ファミレスはお金をいただいて仕事をしていること。
人間関係も仕事の延長であるのだ。

職場は年齢がバラバラだ。
気合が入っているだの、
高校デビューだのといった価値観は存在しない。
大人が混ざった環境で
「お前、どこだよ?」もないもんだ。

624: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/23(日) 16:23:33.78 ID:+2DD1k7i0
高岡「ヤンキーだろー、真田って。
追いかけてヤっちゃってよー。
そういうの見たいじゃん」

大学行くくらいだから、悪くないご家庭なんでしょう。
あなたはよく知らないと思いますがね、素人のお嬢ちゃん。
ほんとに目の当たりにすると、
凄いびっくりすると思いますよ・・・

真田「そんなことしませんよ。
自分、喧嘩とか、苦手ですから」

嘘おっしゃい!!!
横で話を聞いてて、耳が腐るかと思ったよ。

625: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/23(日) 16:32:02.28 ID:+2DD1k7i0
高岡「デガちゃん、真田と同じクラスなんでしょ?
真田って真面目に仕事してるけどさー、
学校とかだと、番長なんじゃないの?」

コーヒーメーカーに新しい豆を入れていると、
急に話を振られた。

バイト先ではデガちゃんなどと呼ばれている。
お恥ずかしいこってす。

年も一番下ということもあり、みんな良くしてくれる。

もちろん、俺は仕事を覚えようとしているし、
労を惜しんだことはない。
いつでも真っ先に自分で動き、
やることがなければ仕事を探していた。

学校とは生存のルールがまったく違う。
ここでは当たり前の努力で、
物事がいとも簡単に好転していく。

高岡の話に、一瞬柴田が憑依してきて

「お姉さんさー、ぜんぜん分かってないわけ。
高校に番とか、そういうのないわけ」

とか言いそうになったが、どうでもいいですね、ここでは・・・

俺「いえ、真田は普通ですよ」

相手が女でも、敬語で話す場合はコミュ障が発生しない。

学校のことや、真田の伝説について、
職場で触れられたくないだろうな、
というのは雰囲気で分かっていた。
真田を尊重してあたりさわりのないことを言うイイ子な俺。

627: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/23(日) 16:34:57.18 ID:+2DD1k7i0
高岡「そういえば真田の明日のシフト見たけど、
昼から出るんだ。平日なのに、珍しいね」

・・・
ちょっとおかしいよね、それ。
シレっと言ってるけど、他人のシフトなんて、
注意してないと覚えませんよ・・・

真田「遠足なんで、バックレてバイト入れました(笑)」

高岡「遠足w可愛いんだけどw」

真田「可愛いけど、1円にもなりませんからね」

真田、お前の口から「可愛い」とか出ると、とても違和感があるぞ。
自覚してるか?
そして、高岡が一瞬萌えたのを、俺は見逃さなかったぞ。

高岡「アガるの一緒だし、終わってから、どっか遊び行く?」

速えーな、この男喰い。
女子大生って人が見てる前でも、スラっと誘うのね。
このビッチめ。ビッチめ。
真田、畜生、いいな、真田。

真田「行きたいんですけど、そのあと、居酒屋のバイトなんですよ」

俺だったら、バイトなんかサボるよ;_;
高岡だよ、高岡。
匂いを近くで嗅げるだけでいいだろ、お前。
パイオツだって揉ませてくれそうじゃねーかよ;_;

629: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/23(日) 16:41:39.08 ID:+2DD1k7i0
高岡「じゃあ、その居酒屋、飲み行こうかな。
デガちゃん、一緒行かない?」

いきなりで俺は本当にびっくりした。
俺の人生にそういうことは無縁だと思っていたから。

俺「え、え、え」

やばいコミュ障が出てきた。
ビッチとか言ってすみません。
ビッチ歓迎でございます、男出川15歳。

高岡「大丈夫だよ、とって食べたりしないから」

いっそ、食べちゃって><

真田「来いよ、出川。高岡さんと一緒に。
うちの居酒屋、魚うまいぞ。
新鮮なアワビとかも安く出してるしな」

アワビ美味しそうだね。
高岡のアワビはお幾ら万円? ;_;

「なになにー? 遊びに行くのー?」

なでしこジャパンの鮫島彩に似た女子大生も、
話に加わってきた。
特別美人というわけではないが、ノリが良い。

彩のアワビはお幾ら万円? ;_;

630: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/23(日) 16:45:18.89 ID:+2DD1k7i0
鮫島「真田のハチマキ、見たい見たい」

真田「ハチマキ?」

鮫島「居酒屋といえば、ハチマキでしょ?」

真田「すみません、ハチマキはしてないっすね」

鮫島「じゃあ、明日はハチマキしてよ」

高岡「ハチマキして『あいよ』とか言われたいね」

真田「家にあったと思うんで、持って行ってみますね」

仕事だと、サービスいいのね、あんた。
ブス相手に何張り切っちゃってんの?

フン、馬鹿みたい。
あたし、つまんなーい。

ってか、家にハチマキあるのか・・・
お前、どうせあれだろ?
ウンコ座りして、
どうせ長い特攻服に「鬼に会っては鬼を斬り」とか刺繍して、
ハチマキをしてたんだろ・・・

目に浮かぶようだよ!

631: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/23(日) 16:52:56.67 ID:+2DD1k7i0
高岡、鮫島、俺の三人で、
真田が働く居酒屋に行くことになった。

複数人数とはいえ、女と出かけたことなんてない。
しかも、相手は女子大生である。

明日の遠足は17時には家に着くことになっている。
19時に駅で待ち合わせなら十分間に合う。

浮かれていないかと言えば嘘になる。
しかし、状況が想定の斜め上を行き過ぎていて

アワビ二丁、
いただきましたあああああああああああああああ
よろこんでええええええええ

という、ややヒステリックな高ぶりに似たものであった。

経験したことのないテンションに包まれる俺は、
この時もちろん知る由もない。
遠足でクラスの勢力図を一変させてしまう事件が起こることを。

10人の団体が入ってきた。
鮫島が「いらっしゃいませ」と出ていく。
俺は慌てて、10個のお冷を用意すると、ボックスからおしぼりを取り出した。

632: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/23(日) 16:53:50.25 ID:+2DD1k7i0
ってことで、おまいら、今日もありまとな!
忘年会、行ってくる。
ノシ