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299: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/08(土) 21:53:05.79 ID:Mc+Yz+gC0
母親は明るくなった。
相変わらず料理は簡単なものだし、
仕事が終わればそれなりに疲れている。

しかし、以前のように暗いオーラがなくなった。

仕事に慣れたのだろうか?

働いたことのない俺にとって、
働くということがどれほど疲れるかなんて、
この頃は知る由もなかった。

真田の助けもあって
「跳べた」俺は、
すぐに知ることになるわけだが。

俺は労働に対して、高校生らしからぬ認識をすることになる。
金の亡者は一夜にして生まれるわけではないのだ。

301: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/08(土) 21:54:53.73 ID:Mc+Yz+gC0
父親が健在の頃、母親も当然のように成金的な生活をしていた。
贅沢が嫌いな人間は少ない。
そして、当時の俺の家はオヤジ絶対主義である。

仮に母親にどんな思想があろうとも、
それが通ることはなかったのは、子供の俺でも分かる。

第二次世界大戦中のスローガンに
「贅沢は敵だ」
とあった。
パロティは弱者が持つ唯一の武器である。
当時の特高警察はポスターへの落書きくらいでも
平気で投獄したはずだが、小さな勇者はいるものだ。
このスローガンに「素」を入れて
「贅沢は素敵だ」
とした奴がいた。
確かに素敵だ。
しかし贅沢とは自分が出来なければ、
まったく素敵ではない。

オヤジ失踪後、母親は金持ちに対して否定的になり、
あまり貧富の差が出ることは好ましくない、
といったスタンスを明確にしはじめる。

このあたりの感情的な「転向」は女性らしいな、
今なら微笑ましく思う。
だが、当時の俺は、
それだけ自分の家庭が追い詰められているという、
焦燥感に拍車をかける要素でしかなかった。

302: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/08(土) 21:57:33.77 ID:Mc+Yz+gC0
母親はこの頃、明らかにアカにかぶれていた。
そう、共産党寄りの発想になっていった。
2012年にもなるとかなり減ってきてはいるが、
当時はまだまだ共産党に対して知的な印象を持つ人間が一部に居た。

選択筋太郎は酒に酔い、
俺は電気を消した自分の部屋で、ゆっくり秋山をなぶる夢に酔う。

色々だ。
アカデミズの純粋性が産み落とす、
非現実的な理想に酔う奴もいるのだ。

下地もあった。
母親は学生時代、少しそっち系にかぶれていた過去がある。

オヤジの会社倒産の後は、共産党員にアドバイスを受けたりもしていた。
住居のチョイスが公団、
県立高校へのチェンジするといったものも
母親一人の知恵であったかといえば、そうではないだろう。

303: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/08(土) 21:59:53.61 ID:Mc+Yz+gC0
俺が母親と違ったところは、
金持ちに迎合しようとしたことだ。

ブルジョアジーや資本家というものは
打倒すべき存在ではなく、
目指すべき姿となっていく。

この俺の金の亡者的な考えを後押しする
「母親絡みの事件」も起きることになるが、
これはまた、もうちょっと先のお話。

1スレの704にあった以下の部分とも重なる。
---
仕事から帰ってきた母親は、いつも疲れていた。
そんな母親を見るのを俺は嫌いだったし、いつも憂鬱だった。

この母親が良くも悪くも様変わりするのだが、うちをさらに不幸にしていくわけだが、
それはもうちょっと先の話だ。
---

搾取をされていることを嘆くことでは解決はしない。
もっと大きく枠組みを壊そうとして努力したところで、世界は変わらない。
冷戦構造は終わりを告げ、
米国流の資本主義がいよいよ世界のスタンダードになってきていた。

よしんば、政治によって国が変わったとしても、
さらなる権力の集中や貧富の差しか生まない。

貧富の差だけならいい。
中国しかり、ポルポトしかり、ロシアしかり、大虐殺にまで発展するのである。

俺は薄汚い資本家になる方が、
よほど楽しく現実的だと思っていた。

つまらないイデオロギーの話は、DQN物語には似合わない。
俺が足を組んで、髪をかきあげて、
イケメンを気取ってはいけないようにな。

話を母親に戻す。

304: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/08(土) 22:05:03.17 ID:Mc+Yz+gC0
表情も豊かになった。
顔色も良い。
父親不在にも慣れたのだろうか。

母親のこの変化は家の空気を良くしていたのは確かだ。

この頃俺は、母親とはほとんど話をしなくなった。

まぁ、思春期ならば、そんなもんだろう。
煩(わずら)わしくて、まともに相手するのは気力を必要としていた。
だからといって、母親が嫌いなわけではなかった。
いや、心配もしていたし、大切な存在であることに変わりはない。

中学あるいは高校という時期は、
DQNだろうが真面目だろうが、母親には冷たくあたるものである。

母親「学校、どうなの?」

俺「普通」

普通なんてあるかよwww
百歩譲って普通の高校生活があるとして、
どっちにしても嘘じゃん!
俺は毎日タゲられて、ボコボコよん。

母親「勉強はどう?」

俺「レベル低すぎ」

俺も学校のレベルにあわせて、グイグイと下がってるけどなwww
おそらく、前の学校なら、
上の下であったが、今戻ったら、中の中くらいにはなってるだろう。

母親「哲郎、大学、行きたいなら、なんとかするから」

母親は最近、再び
「自分の子供は大学に行かせないとならない」
症候群がぶり返してきていた。

とはいえ、俺にバイトしてほしい、家計を助けて欲しい、
というのは相変わらずである。

明るくなった母親も、金の話になると、表情が曇る。

俺「いかねーって言ってるだろ、ゴラ」

石橋、ダンカンには弱いくせに、
母親相手だとラオウのように強い俺、超カッコイイ!!!

306: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/08(土) 22:10:13.31 ID:Mc+Yz+gC0
金の心配は変わっておらず、
俺にバイトをしてほしい、しかし言い出せない。

このさじ加減については、変わっていない。

それなのに、大学については振り子のように
あっちにユラユラ、こっちにフラフラ。
母親も精神不安定なのだろう。

この時の出川家は生きるのに精いっぱいであったのだから、
今にして思えば当たり前である。
しかし、高校生というものは身体は大人でも中身は子供だ。

母親の言動に矛盾があることが許せなかった。
やはり、心のどこかに親は絶対的であって欲しい、
というものがあったのだろう。

俺の「ゴラ」に母親がプルプルしはじめた。
このプルプルはヒステリーの前兆である。

うむ。

プルプルしておるではないか。

パターンは2つだ。
俺がこのまま自分の部屋に入って一方的に話が終わる。
あるいは、プルプルを迎え撃つ気力を漲らせながら、
気の狂った言い合いになるか。

この日、俺は部屋に入ることを選んだ。

その時、電話が鳴った。
この頃、俺の家にはよく電話がかかってくるようになっていた。
なぜだろうか?
母親の変化にも影響を与えている。

母親「はい出川です」

どうせ母親の電話だと思い、自分の部屋に戻ろうとすると、
「少々、お待ちくださいね」と言って俺の方を見た。

え?
俺に電話なんか、
かかってくるの?

尿道がウズっとした。

329: CBX 2012/12/10(月) 08:43:21.47 ID:vEz5alXp0
>>306
>しかし、高校生というものは身体は大人でも中身は子供だ。

身体は子供で頭脳は大人の小学生がいてだな・・・
あれ?なんか全身が黒い人がいる・・

359: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/12(水) 13:09:06.76 ID:U/ZpSTn20
電話は真田からだった。

俺「はい」

真田「おぉ、出川。今、バイト先からなんだけど、遅くに悪りぃな。バイトの件」

俺「あ、うん」

真田「店長に話をしたら、面接したいってことになったわ。急で悪りぃーんだけど、明日の4時にファミレス来れるか?」

俺「大丈夫、予定まったくない」

真田「そうか(笑)」

真田は後ろにいるであろう、社員に何か伝えてる風である。

真田「じゃあよ、4時にファミレスの駐車場の裏に小さい公園があるんで、そこで落ち合んでいいか?」

前に行ったこともある。
よく知っている。

真田とは電話もするようになった。
うん、なった。

真田にしてみれば、すべき行動を自然にやってるだけだろうが、俺にしてみれば、1つずつクエスト終え次第に「信頼度」のパラメータがあがっている実感があった。

電話を切り終えると母親が「お友達、出来たのね」と笑っていた。

風。
吹いている。

この夜の早馬(電話)による書状(バイトのオファ)が、天下の形勢を大きく変える第一歩となる。

俺の覇道の第一歩は、明日の行軍から始まる。
軍勢はすでに集結させてある。
その数、数千万から数億。配備された場所は股間だ。

掴めるのか?
この手に。

俺は何を掴むつもりなのだ?

空。

1つだけ強く輝く星が見えた(単なる金星だけどね)。

371: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/12(水) 21:00:50.28 ID:U/ZpSTn20
今日は夕方、真田と待ち合わせである。

俺は一度、家に戻り、30分以上の余裕を持って出た。
面接にどんな格好が良いのか分からなかったので、学生服のままにした。

ファミレスまでは歩いてすぐだ。
俺は道すがら秋山のことを考えていた。

図書室で、秋山とその友人から話しかけられてから、たまに挨拶をするようになった。

俺にとってみれば、大いなる前進だ。

と同時に、欲も出てくる。
もっと仲良くなりたい。

人間の欲望というものは限りがないもので、話せるようになれば、付き合いたいとなり、セクロスまで持っていきたいのは当然の帰結である。
帰結とかカッコつけた、すまん。

ただ、俺は女と付き合ったことがない。

ってか、女友達だって居たことない。
中学、男子校だしな。

375: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/12(水) 21:06:22.33 ID:U/ZpSTn20
でも、俺は決めた。
秋山に全てを捧げると。
大切に大切に守っていた童貞さえも、惜しくはなかった。
秋山になら喜んで差し出せる。

かくなるほどに思いつめていたのだが、小心者の俺は、図書室へ足を運ぶ頻度は少なくなっていった。

秋山との関係構築を進めるつもりは、もちろん、ありゅ。
大いにある。

ただ、ミスをするのが恐ろしかった。
俺にはノウハウがないのだ。
どうすれば、女と仲良くなれるんだろうか?
あまりちょくちょく顔を出して引かれるのも困る。

色々な理由を自分なりにくっつけていたが、過剰な自意識に振り回されていたというのが最も大きい。
とにかく恥をかきたくなかった。

376: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/12(水) 21:10:48.50 ID:U/ZpSTn20

もうね、性欲と恋愛感情がごちゃごちゃになってて、自分でもよく分からなかった。
相談できる友達なんてのも居ない。

ん?
柴田ってどうなんだろう?

「女?ああ、あれよあれ。気合と根性だろ」

みたいなまったく理解できないアドバイスをされそうな気もする。

あるいは

「まぁ、ナオンのことは任せろや。うち、姉ちゃんいるんで、俺りゃ、そのあたり詳しいわけよ。女ってのは結局、デカマラが好きなわけ」

とか、どこかのエロ小説の話をコピペしてくる可能性もある。

ただ、いずれにしろ、俺よりは詳しいだろう。
相談してみるのも悪くないかもしれない。

この頃はまだ、俺はDQNのほとんどが中学時代に酒池肉林を経験していると思い込んでいたから。

377: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/12(水) 21:17:19.21 ID:U/ZpSTn20
真田との待ち合わせは小さな公園である。
横に長く、植え込みで囲まれている。
公園というよりも、遊歩道に近い。
俺はベンチに腰を下ろした。
時計をみると15時半。30分早く着いた。

アルバイトの面接など初めてだ。
コミュ障の俺が、うまく喋れるのだろうか?

真田を待ちながら、ベンチでぼーっとしている間、俺は回想していた。
中学時代、小学時代と。
どうして俺の人生はこんな風になってしまったのだろうか?

中学の頃、父親の会社がおかしくなるまでは、良い大学に行く、それしか考えていなかった。

小学の後半は受験一筋。

たとえば、5歳の頃の俺の夢はなんだったんだろうか?

パイロット?
野球選手?
総理大臣?

違う、特に夢なんかなかったような気がする。
ただ、まさか15歳になってイジメに合ってるとは思うまい。

378: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/12(水) 21:18:01.09 ID:U/ZpSTn20
合わせる顔はあるのか?
果たして5歳の俺と、今の15歳の俺が出会ったら。

5歳の俺「おにーちゃん、今、楽しい?」

俺「うーん、どうだろう?」

5歳の俺「楽しくないの?」

俺「なんかね、痛いんだよ。毎日。心も、身体もね」

5歳の俺「どうして?」

俺「イジわるされてるんだ」

5歳の俺「悪者がいるんだね」

俺「『僕』は頭がいいね。そうだ。だけど、俺は今、頑張って立ち向かおうとしてるんだ」

5歳の俺「倒せそう?」

俺「わかんない。でも『僕』のためにも俺は頑張るよ」

5歳の俺の頭を撫でながら、俺は言った。

「ねー、ヒンイロいないの?」

ヒンイロ?

「ああ、ヒロインのことか?難しい言葉を知ってるんだな」

「ちれいなお姉さんとレンアイしないの?」

「するさ。秋山って名前のヒロインが出てくるんだよ」

「恋に落ちるの?」

「ああ、落ちるよ」

「落ちるとどうなるの?」

「セクロスできるんだよ」

「なぁにそれ」

「マxコにチンコ入れるんだよー」

「マxコってなーに?」

「女の人のチxコだよ」

「おにいちゃん、すげーや」

何が凄いのか、ぜんぜん自分でも分かりません。

380: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/12(水) 21:23:27.91 ID:U/ZpSTn20
そんな妄想をしていると、バイクの止まる音がした。
こういう音、大嫌いなんだよ、俺は。

高校生らしき2人組が公園に入ってきた。
斜向いのベンチに腰を下ろして、タバコを吸い始める。

見るからにDQNなのである。

俺はそっちを見ないようにしてたが、こちらを見てるのは分かる。
何やら話し合っているようだ。

嫌な予感がした。

チラリと2人組を見たら、まだこちらを見ている。
目が合った。
俺はすぐにそらした。
1人は背が高い男パーマで、1人は小太りのリーゼントだ。

嫌な予感が3倍くらいに膨らんだ頃、二人は案の定、こちらに向かってきた。

381: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/12(水) 21:27:18.56 ID:U/ZpSTn20
ベンチに座る俺の前に立つ二人。

パーマ「なぁ、自分、栗南(クリナン)?」

栗南とは栗橋南高校、つまり俺の学校のことだ。
面倒くさいことになったと思った。
真田が来る時間まで、あと25分くらいある。

俺「一応」

小太り「何年?」

俺「1年だけど」

俺の答えを待って、俺をはさむように、二人で腰をかけた。
パーマが俺の肩に手をかけた。

パーマ「おい、お前。俺ら2年なんだよ。何タメ口きいてんだよ」

コイツらがほんとに2年かどうかは分からないが、一応、敬語にしておくか、と思った。

俺「すみません、はい。栗橋南高校です」

小太り「知ってっか?」

知らねーよ。
知ってても知るかよ、ボケが!
1秒でも早く、お前らと決別したいよ、俺は。

小太り「この前よ、うちの1年がお前らんとこの2年だか3年にタカリかけられたんだよ。」

それがなんか俺と関係あんのかよ。
もう、放っておけよ。
俺の恰好見りゃ分かるだろ。
ぜんぜん、真面目じゃねーか!
これっぽっちも、1mmもヤンキーと関係ねーじゃん!!!

382: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/12(水) 21:28:32.87 ID:U/ZpSTn20
俺みたいな奴に絡むDQNはレベルが低い、というのは、さすがに俺でも分かり始めてきた。とはいうものの、俺の勝てる相手でもない。

俺「知りません」

情けない俺・・・

パーマ「とぼけても分かんだぞ、おい」

言いがかりである。

小太り「まぁいいや、とりあえずよ、1年に金を返してやりたいんだわ。2万あるか?」

まぁいいのかよ?
じゃ、ほっとけよ!
で、なんで「とりあえず」って続くんだよ。
そして、金返してやるから2万あるかって、どんな3段論法なんだよ!

頭にウジ湧いてんのか!?

俺「いえ、俺、分かりませんから」

パーマ「わかんねーじゃねーだろ。俺らの後輩がお前らんとこにカツアゲされたんだよ」
胸倉を掴まれた。

俺は目の前がグラグラとしてきた。

揺すられたわけではない。
精神的にこの手の荒事への耐性がなく、石橋ダンカンのイジメもあって、まともでいられなくなるのだ。
きっちり恐怖で動けなくなった。

384: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/12(水) 21:29:19.22 ID:U/ZpSTn20
時計を見る。
4時まであと20分もある。
20分もあれば、ボコボコにされるに十分な時間だ。

殴られ慣れているので、所要時間についてはけっこう詳しくなってる自分が悲しかった。

小太り「立てよ、こら」

胸倉を掴まれたまま、ベンチから立ち上がる。

俺は目をきつく閉じた。

小太り「まずよ、お前、サイフ出せや」

薄く目を開ける。

え?

え?

え?

視界の端に真田が見えた。

時間より早く来てくれたんだ!!!
Tシャツに破れたGパン、鎖のついた皮ジャンを着ている。

真田は無言でこっちに寄ってくると、しばらく後に突っ立っていた。

390: 名も無き被検体774号+ 2012/12/12(水) 21:37:04.22 ID:XW5UTe5E0
真田イケメンだなー
ヒーローだわ!


あれ?ヒーローってことはヒロインと結ばれ...

393: 名も無き被検体774号+ 2012/12/12(水) 22:02:24.38 ID:lKjrWGl3O
真田カッコイイ
つうか「やっ」って狙っただろ出川君

395: 名も無き被検体774号+ 2012/12/12(水) 22:23:27.08 ID:fqGQD4FT0
真田イケメン杉…

396: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/12(水) 22:37:45.52 ID:U/ZpSTn20
パーマ「とりあえず、サイフ出せって言ってんだろ、お?」

真田は二人の後ろに立っているので、彼らからは見えない。
真田と目があった。
眉間に皺を寄せている。

小太り「ちょっと、そっち押さえろや」

パーマ「ん?」

パーマが後ろの気配に気づき、振り返った時、真田は首をかしげているところだった。

その瞬間、パーマは横にすっ飛んだ。

一瞬、何が起きたのか分からなかった。
真田のフック気味のストレートが入ったのだ。

397: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/12(水) 22:40:51.77 ID:U/ZpSTn20
パーマ「っ痛ぇ、え?え?」

倒れたパーマは脳を揺らしたのだろう。
手をついたまま、すぐに起き上がれないでいる。

真田はゆっくり近づく。
いや、ゆっくりに見えるだけで、僅かな時間で正確な位置取りをしている。
そして虚ろなパーマを蹴りあげた。。
真田の頭の高さの位置は変わらない。
身体だけ回転させながら、足をぶちこんでいる。

ガとゴ、ブとハの間のような「ガハ」とも「ゴブ」ともつかない呻きが洩れた。

パーマ「ガハガハ、ちょ、ちょ、ちょっと、待って」

転がりながら、パーマは逃げようとしている。
真田は狙い澄まして顔を踏みつける。

「がああああああああああああああああああああああ」

パーマの絶叫が聞こえた。

398: 名も無き被検体774号+ 2012/12/12(水) 22:42:30.85 ID:y8w9Cx3x0
やっぱ真田すげえ

399: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/12(水) 22:43:29.00 ID:U/ZpSTn20
「ず、ずびません、ずびばぜん」

ようやく、小さい声で、それでもとてつもない早口で真田に詫びを入れ始めた。
すでに戦意は完全に喪失している。
身体を丸めて、土下座のような恰好になっている。

茫然としていた小太りはようやく事態を飲み込み、大声を出す。

小太り「お、おい、なんだ、てめ、ふざけんなよ」

しかし、声は震えている。
そして、その場から動けないでいる。

真田は小太りに一瞥くれただけで、再びパーマに向き合う。
襟首を持って水銀灯まで連れていく。
髪を掴んで、いきなり叩きつけた。

パーマ「もう、ゆるひて、ずびまぜん、ずびっガゴン」

石橋の暴力とは次元が違う。
真田の喧嘩には逡巡がない。

二流どころは「てめどこだ?」だの「俺りゃ、あの先輩を知ってる」だのの、掛け合いをする。
そこまでまだるっこしくなくても「やんのか?」とか「俺りゃ、今日、機嫌悪いーぜ、いいんだな」だのとなんかしらの言葉はあるものだ。

真田のこれは、喧嘩なのか?

400: 名も無き被検体774号+ 2012/12/12(水) 22:46:01.74 ID:sDlsKcQVO
出川お前ヒロインかwww

402: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/12(水) 22:51:52.15 ID:U/ZpSTn20
小太りの顔面が蒼白になっている。

小太り「お、お、おい。お、お前、どこ」

後に下がりながら、真田相手に全く無意味であろう掛け合いを試みる小太り。

真田はすぐに小太りとの間合いをつめる。
速い。

小太りはさらにのけ反るように下がろうとした。
その時、小太りが宙を舞った。
舞ったように見えただけで、真田に足払いをされ、転倒した。

転んだままの小太りを、蹴りまくる。

ぐっ、ごっ、ぐっ、ごっという呻き声と肉を蹴る音が交互に響く。

不思議と真田の蹴ってる姿は乱暴には見えない。
ゆっくりと「形を整える作業」でもしてるような、そんな蹴りだ。
ただ、重いということは音からも分かる。

小太り「がんべん、がんべんしてください。か、か、金、出します、勘弁してください」

真田の蹴りがさらに激しくなった。
この頃、俺はすでに気づきはじめていた。

真田はカツアゲとかが大嫌いなのだ。

403: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/12(水) 22:55:56.66 ID:U/ZpSTn20
小太り「ひいいひいい」

小太りが耐えきれずに、へっぴり腰で逃げようとする。
手で地面をかけながら、カエルのようだった。

パーマは起き上がってこない。
まだ、身体を丸めて震えているが、頭を覆いながら、真田を見ていた。
逃げ出すタイミングをはかっているのだろう、と俺は勝手に予想した。

二人のDQNが頭を抱えて、丸くなっている。
髪の毛が派手な分、余計に奇妙な光景だ。

真田が初めて口を開いた。

「お前らさ、このあたりには、もう来ねー方がいいぞ。次は手加減しねーからな」

嘘おっしゃい!
手加減なんかしてないくせに!!!

「は、はい」と言いながら、パーマが小太りに駆け寄り、肩を貸して公園から出て行った。

俺は茫然と2人のハンパDQNが去っていく様を眺めていた。

真田「大丈夫だったか?」

俺「あ、ありがとう、助けてくれて」

俺は声が震えていたと思う。
正直、恐ろしかった。

真田「いや、別に出川のためじゃねーよ。バイトの面接、連れていけねーと、俺が困るからよ。店長怒っと、怖えから。自分のためだから、気にすんなって」

真田、お前に怖いものなんかないだろ・・・
礼を言う俺から目をそらすと「じゃあ、行っか」と歩き始めた。

真田の喧嘩は喧嘩というより破壊だ。
ただただ圧倒され、背筋に冷たいものが走った。
だが、それ以上に痛快だった。

俺はこの日、初めて目の当たりにした。
強さ、というものを。

404: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/12/12(水) 22:56:27.66 ID:U/ZpSTn20
ってことで、今日もおまいら、ありまとな!
また次回ー。
明日は5時起きなんだよー。ノシ