最初から読む方は↓
47: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/11/28(水) 23:04:02.60 ID:6fsUENto0
良い昼休みだった。
温かいカツカレーとリンゴジュース。

真田の先輩にも挨拶が出来た。
向こうはもう覚えていないだろうがwww

しかもおごりである。
この時の俺は、出費に対して日に日に敏感になっていた。
昼飯代が浮いたことは、政治を抜きにしても喜ばしいことだった。

高校に入学して色々なことが起きた。
そして、俺は自分が変わりつつあることを自覚していた。

そりゃ、DQNは怖い。
暴力への耐性は相変わらずゼロだ。
そして、コミュ障も進行はしていないものの、
改善に向かっているわけではない。

ただ、少しだけ、変わってきた。

決意や覚悟のようなものが出来てきた。

学園生活を無事に乗り切るために、あらゆる手段を尽くす。
目的を達成するための戦略を練り、その戦略を戦術に落とし込む。
俺の一学期の高校生活は、日々、これの繰り返しだった。

明確な方向性を持った俺は、行動にブレがなくなり、
大胆なオファーが出来るようになった。

こう書くとカッコ良く見えるかもしれないが、
テレビゲーム越しに
自分と言うキャラクターを動かして、
クエストに取り組む、
そんなちょっとした離人症のような感覚はあったと思う。

もちろん、ちゃんと実感はしていたし、恐怖や痛みはリアルに感じてはいたが。

48: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/11/28(水) 23:06:31.93 ID:6fsUENto0
学食から戻ると、俺と真田はいつものように赤の他人に戻る。

授業中、石橋・ダンカンの視線を感じながら、放課後を待った。

そう、図書室の時間がはじまる。

3階にある図書室はDQNさえ来なければ静かなところだ。
校庭のグランドが一望できる閲覧スペースは解放感がある。

薄暗い書棚から移動すると、光の強さと空間の広さを実感する。

俺はいつもここで物色した本を並べて、眺める。

秋山のことを思いながらだ。

秋山はサイエンスフィクションが好きだった。
いわゆるSFというジャンルだ。

(1スレの261でも書いたとおり)
俺は彼女の情報は随時仕入れていた。
図書カードを盗み見たりもしていたので、読書傾向は把握していた。

筒井康隆の「時をかける少女」や眉村卓などを借りている。
SFといっても、ジュブナイルのようなものだ。
●●市の歴史、みたいな、
まーったく面白みのないものも混ざっている。
真面目な学生なんだろう。

奥手のコミュ障、
しかもブサメンってのは外堀から埋めるほかない。

それが発展してストーカーとかになるのだろう。
俺もこの日、
事件がなかったら、
ストーキングに血道をあげていたかもしれない。

今日は確変(パチンコでフィーバーして玉がいっぱい出ること)に入った、
俺の事件について書かせてくれ。

49: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/11/28(水) 23:11:42.56 ID:6fsUENto0
俺はSFに限らず、小説全般に興味がない。

秋山とは趣味が違うのだ。

とはいえ、俺は秋山の図書カードにあったタイトルを
チェックして、
秋山が借りたSF小説の2、3割は借りた。

俺の好意があからさまになることは恐れていた。
だから、露骨にカブるようにはしなかった。

わざわざ借りずに、
閲覧スペースで流し読みをして終えるものもあった。
読み終えた生徒が名前を記入する紙があり、
秋山の名前の匂いをかいでみたり、
舐めたりもしていた。

わりと趣味は近いの借りてるー。
だけど8割は違う本だよー。

俺の図書カードを秋山が見たら、
上のようなメッセージを受け取ることだろう。

俺はこの手の繊細かつ狡猾なアプローチを、
意味もなく緻密に積み上げては悦に入っていた。

子供って、自分中心に世界と向き合うから、
他人がそこまで自分になんぞ興味がないってことを、
よく知らないのだ。

50: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/11/28(水) 23:14:16.68 ID:6fsUENto0
ま、いいとして。
この日、俺はフランツ・カフカの「変身」を借りた。
チェコ出身のドイツ語作家で
「変身」は1913年あたりに書かれた中編小説だ。

秋山の読書の旅を俺なりに予想をしていた。
SFが好きなら、必ずナンセンス、
シュールといったところに向かう時期が来る。
それは、自然主義が反自然主義となり、
やがてロマン派へと発展するように。

最初はエロ本ならなんでも好きだったが、
しだいに「俺は縛りに特に興奮するようだ」
と自覚をして
「SMスナイパー」を定期購読し、
導かれるように団鬼六という巨匠にたどり着くように。

SF好きの秋山が、不条理小説のカフカにたどり着くまでに、
それほど時間はかからないと踏んでいた。

「変身」を持って、カウンターに向かった。
俺のチンポもちょっと変身気味。

51: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/11/28(水) 23:16:06.62 ID:6fsUENto0
秋山と、秋山の友達が並んでいた。

うはwww秋山www
やっぱ、かわえええええええええwww

ベロベロベロベロしたいよぉおおお。
秋山かわいいよ秋山。

秋山の友達は別にブスでも美人でもない。
俺はまったく興味を持たなかった。

こいつは俺の人生に、なんの影響も与えない。
単なるエキストラであろう。

と思っていたのだが、
俺をだじろがせる一言を友達が放った。

「4組の出川君だよね?」

おいwwwエキストラwww
セリフあったのかよwww
じゃなくて。

は?
なんですか?

急に話しかけられても困るんですが。
しかも、お前に俺、興味ねーし。

コミュ障をあまりナメないでほしいですが。

俺「え?うん」

一応は返事する俺。

友達「読んだよー、読書感想文」

一瞬、意味が分からなかった。
そのあとで、足に震えが来た。

52: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/11/28(水) 23:17:12.37 ID:6fsUENto0
コイツ、もしかして、重要人物かもしれない。

届いたのか?
俺の刃、なんか違う方向に届いちゃったのか?

友達「ほら、秋山もー」

え、何それ?
秋山「も」って。

もっかい言って。
ね、もっかい言って。

友達「秋山も褒めてたじゃん」

秋山が「なに、やめてよー」と小声で言ってる・・・


え?


え?


きたの?





キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

53: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/11/28(水) 23:18:42.73 ID:6fsUENto0
鈍感な俺でも分かる。

秋山はおとなしい子だ。
何があっても自分から話しかけるなんてことはない。

そして、俺もそうだwww

しかし、プリントされた俺の感想文を読んで、
なにかしらを感じてくれたのだ。
もちろん、俺が「毒」を仕込んだとも知らずに。

俺が想像した図はこうだ。

この友達に
「この感想文っていつも借りに来る4組の人だよね?」
みたいな話をしたんだろう。
で、友達が秋山に代わって話しかけてくれたのだ。

エキストラだとか、興味ねーとか言ってすみません。
足舐めさてください、おねーたま。

秋山「私もあの小説、好き」

お前の足はもっと舐めたい。

秋山と目が合った。
ずっと見ていてええええええ。
けど、すぐに外した。

俺「あ、あ、ハインライン、いいよね」

下を向いて、俺はモゴモゴと喋った。
事務的な会話以外を初めて交わした。

友達「私も好き」

お前には訊いてないよ *^-^*

54: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/11/28(水) 23:20:25.26 ID:6fsUENto0
そう、俺はまったくもって好きでもなかったのに、
ハイラインの「夏への扉」という、
くっせーSF小説を題材にしていたのだ。

そう、これこそが、俺が仕込んだ刃であった。

あれって、素人受けいいんだよねwww
甘ったるくて、俺にはなんも響かないよ^-^

ってか、けっこう苦痛だったよ、読むのwww

俺は続けた。

俺「なんか、淡くて」


      ィ";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙t,
     彡;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
     イ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;r''ソ~ヾ:;;;;;;゙i,
     t;;;;;;;リ~`゙ヾ、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ    i,;;;;;;!
     ゙i,;;;;t    ヾ-‐''"~´_,,.ィ"゙  ヾ;;f^!   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     ト.;;;;;》  =ニー-彡ニ''"~´,,...,,.  レ')l. < 俺は一体、何を言っているんだ
     t゙ヾ;l   __,, .. ,,_   ,.テ:ro=r''"゙ !.f'l.   \____________
      ヽ.ヽ ー=rtσフ= ;  ('"^'=''′  リノ
    ,,.. -‐ゝ.>、 `゙゙゙゙´ ,'  ヽ   . : :! /
 ~´ : : : : : `ヽ:.    ,rf :. . :.: j 、 . : : ト、.、
 : : : : : : : : : : ヽ、  /. .゙ー:、_,.r'゙: :ヽ. : :/ ヽ\、
  :f: r: : : : : : : : !丶  r-、=一=''チ^  ,/   !:: : :`丶、_
  : /: : : : : : : : :! ヽ、  ゙ ''' ''¨´  /   ,i: : : l!: : : : :`ヽ、
 〃: :j: : : : : : : ゙i   `ヽ、..,,__,, :ィ"::   ,ノ:: : : : : : : : : : : :\
 ノ: : : : : : : : : : :丶   : : ::::::::: : : :   /: : : : : : : : : : : : : : : :\


淡いわけないだろ、あの気持ち悪い小説。
どこがいいのか分からないが、
俺は全力で迎合しておいた。
おそらく変な笑顔になっていただろう。

秋山「海外のSFだと、
あれが一番好きだから、なんか嬉しくて」

俺「俺も一番好きで、だから、選んだ」

もちろん、違いますけどねwww

55: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/11/28(水) 23:20:58.77 ID:6fsUENto0
まぁ、そうはいっても、
いくら同じ趣味とはいえ、
秋山が、同じ本を読んだ程度で食いつくかどうか?

俺の予想は五分五分だった。
トドメを刺しておかなければならないと思っていた。

だから、俺は刃に毒も仕込んでおいた。
そう、刃は毒を塗った必殺の態勢だった。

感想文の合間合間に
まったく関係ない話を、
教師が「はぁ?」とならない程度に差し込んでいたのだ。

そう、秋山に向けて、
秋山の個人情報と重なるような記述を、
あたかもチンポのように挿入していた。

「もしも主人公に妹と弟がいて、毎日、食事を作っていたとしたら」

とか

「職業意識はテーマを把握する上で、大切である。
たとえば、ベビーシッターと仮定するならば」

などと、

盗み聞きして仕入れていた秋山の日常を、
不自然にならない程度にトレースしていた。

表向きは読書感想文であったが、
俺は秋山にだけ分かるように、
秋山だけが共感するようなギミックを
随所にカマしていたのだ。

57: 名も無き被検体774号+ 2012/11/28(水) 23:29:08.25 ID:pI6zxnq30
>>55
夏への扉かよくそこの考えが言ったもんだ。
早川文庫でしかなかったのでは。

56: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/11/28(水) 23:28:57.38 ID:6fsUENto0
この時の会話は、ほとんど友達が一方的に喋り、
俺は「へー」だの「あう」だの言っていた。

ハインラインやSFの話をされたが、俺は上の空だった。

もっと秋山を間近で見たかったし、
話もしたかったが、
会話が人区切りついたところで、
逃げるように図書室を出てしまった。

俺「あ、行かなきゃ」

それだけ言うのが精いっぱいだった。

秋山も友達も「じゃーねー」などと笑っていた。

不自然にならないように、ゆっくりと図書室を出た。

階段を降りる。
途中から、俺は内股になっていた。
そして、小走りになっていた。

勃起と、くすぐったさと、胸の高ぶりが、
ブレンドして、
走り出さずにはいられなかった。

確変だ、確変だ、確変だ。

もちろん、確変だからって玉が出続けるわけではない。

半勃起で階段を駆け下りるこの時の俺は、
校門を出ると、石橋・ダンカンが待ち受けていることを、
まだ知らない。

58: 出川哲朗 ◆gc/JX/GnzA 2012/11/28(水) 23:32:47.16 ID:6fsUENto0
ということで、今日もお前らありまとな!
遠足終わるまで、ちょっとダルいの続くが、また、次回!
これから、酒飲むわー。

59: 名も無き被検体774号+ 2012/11/28(水) 23:38:26.99 ID:O3oItEKz0
うぅぅぅ今日はもっと読めると思ったのにぃぃぃまた酒かぁぁくそじじいぃぃぃ